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2005年7月8日〜15日 : 北海道日高山系 猿留川
はじめに
初日(8日)
2日目(9日)
3日目(10日)
4日目(11日)
5日目(12日)

3日目(10日)


午前7時半、起床。ドシャ降りなり。
大寝坊。起床後3分で川へ立ち込む。ちゅーかさ、釣りの支度をした状態で寝るなやオレ。(<寒さに負けてウェダーを履いて寝た)
水かさは昨日眺めた時に比べると明らかに多い。夜通し降りっぱなしだったもんなぁ...
水面を叩きつける雨粒の打ち返しで、どれがライズか分からん。それ以前にライズがあるのかすらアヤしいのではあるが。それ程の降りである。
一度、流れ込みのキワでアダムスパラシュートにアタックしてきた何者かがいたが、後にも先にも反応はそれっきり。 仕方なく、ビバークポイントから1647m釣り上がった地点(<GPSがあると便利)で、釣果ゼロのまま引き返す事に。
キャンプ道具の一切を片づけて車に乗り込むと、猿留橋脇のゲートまで移動。
この林道で車が進めるのはこのゲートまでである。以遠は一般車両の通行は禁止されているのだが、ゲート先にも新しいタイヤ痕が確認出来る。 どうやら1台入っているようだ。
冬の猟期に山へ入るハンターは、解禁前に営林署からゲートのカギを借りるのが通例で、ついでに合い鍵を作ってしまうのが一般的とか。 夏場の釣りシーズンにゲート奥に進入している車両は、ほとんどこれらハンターか、その合い鍵をなんらかの形で手に入れた人たちなのだろう。
こんな悪天候の時に乗り入れて、道が崩れて戻れなくなったらどうするつもりなのだろう。誰にも文句は言えないと思うのだが。
当方はバイクの出動をあっさり諦め、猿留橋から適当な区間を釣り上がってみる事とする。


毎回良い思いをしている橋下の淵では残念ながらなんの反応も無く、そこから124m釣り上がった地点(<GPSがあると便利)で、 やっと初釣果に恵まれる。11cmの立派なイワナだ。^^;
その後13cmを筆頭に、9cm前後を2尾ゲット。全部イワナ。
ちなみにトップ写真は一番大きな13cm。(<んなんで写真撮ってるオレってどうなんだろ)
ふと、目黒の漁村で立ち話をした音更(おとふけ)の餌釣師の話を思い出す。
自分は魚は持ち帰らない。写真をとったらリリースする。と話したところ、一気に心を許してくれたようで、 「ここ(猿留川)はもう入ったのかい?今年は釣られまくっちゃって、もうダーメだな。オレは3日連続で入ってるんだけどさ、サッパシだ。 解禁日に来た時なんてひどかったさ。他のヤツらなんて、みんなちゃっこいのばっかり持って帰ってるんだわ。寿司ネタにちょーどいーとかいってさ。 ちーさいの釣りたいのに大きいのが釣れるなんて言ってるヤツもいたしさ。解禁日だけで200釣ったって自慢してるヤツもいた。 ビニール袋覗いたら、ちーーーちゃいのばっかし(小指の第二関節を親指で指しながら)入れてるんだわ。いやーいや、はんかくさいの多いわ...」
かなりご立腹のようである。

言われてなるほど思うのだが、確かにヤマメは1尾も釣れてないばかりか、全体に魚影が薄い。 たぶんにこの大雨で増水している影響もあるのだろうが、それにしても6月までの様相とは雲泥の差である。北海道の人に限った事では無いにしても、 ちょっと酷すぎるなぁ。えげつなさ過ぎる。
などとボンやり思い返しているうちに、微かに水が濁り出している事に気付く。
いかん、最果ての地で人知れずお陀仏になるのは避けたい。
早々に斜面をよじ登り林道に出ると、ゲートへ向かって歩き出す。天気の良い昼間でも薄暗い林道は、天気の悪い日ともなると、尚いっそうの気色悪さを醸し出している。
歩き出して程なく、斜め右後ろでバキバキと2回、枝を踏み折るような音がハッキリと耳に入る。フードに当たる雨粒の音がうるさいが、 それでも鮮明に耳に飛び込む異音である。
シカか?とっさに振り返るがシカの姿は目に入らない。かぶっていたカッパのフードを取り、耳を澄ます。いやな予感。オヤジか?
最悪を想定して腰からカウンターアソールトを抜く。安全装置を外して辺りを警戒する。
変化は無い...
とその時、右手(林道を挟んで枝を踏み折る音がした方とは逆の川側)で、突然バタバタバタッと何者かが木に登る。 ギョッっとする。子グマだ!目を疑う。これはヤバい事になったぞ。マジでヤバい事になった。 2連の大音量で鳴るスズの他に呼び鈴が1つと、普段コロがぶら下げているスズを合わせた3つは、賑やかに遠くまで響いてくれているハズであり、 その効果に頼り切っていた感は否めない。激しい雨がこの音をかき消してしまったのだろうか。
子グマが登っている木と自分との距離は大凡3m程。
いきなり、その木の根本近くで再びガサガサガサッ!と音がして、子グマがクマザサを割るように逃げていく光景を目にする。 木の上から飛び降りた子グマが逃げたのかと思ったが、上を見上げると、まだ枝にしがみついているヤツがいる。 確実に2頭いる訳だ。この状況では、親グマが近くに居ない訳が無い。ある種の絶望感を覚える。
左手で握っていたタックルを草むらに投げ、空いた左手で予備のカウンターアソールトを握る。安全装置を外す。未だ親グマの姿は確認出来ず。
真後ろから飛びつかれたらと考えると気が気ではない。絶え間なく後方を確認しつつ、ゆっくりではあるが確実に後ずさりし、 最初に枝を踏み折るような異音を聞いた辺りから30m程離れた時、いきなり林道左上のヤブから飛び出した親グマが斜面を駆け上り、一瞬のうちに姿を消した。 驚く暇も無いくらい一瞬の出来事だった。やっぱり隠れてやがった...
ともかく助かった。
暫くその場にとどまり状況の変化を見守る。
林道の左手からボスボスボスッと飛び出して、道を横切る事無く斜面の上に消えたって事は、右側で逃げ回っていた子グマはどうしたのだろうか? そこまで観察している余裕は無かった。
はぐれたとするならば、子供を捜しに再びここへ戻ってくるのだろうか?それは困る。
10分程が立ったが、今のところ何事もなさそうなので、イヤイヤ親グマが潜んでいた近くまで舞い戻る。
投げ捨てたタックルを回収しなくてはならないのだ。
無事にXP390を拾い上げ、怖いもの見たさで飛び出した周辺をのぞき込むと、草木の押し倒された後を発見。

ここからオレの姿を見続けていたのだろうか...(写真右)
あーん、おっがねかったよー。

位置関係を読むと、親グマが隠れていたこの辺りから自分が異音を聞いた辺りまでは10〜15m程だろうか。
さらに自分と子グマが登った木までの距離は、冷静になった今、上述の3m程から”10m程”と勇気を持って訂正する。
親と子の直線ライン上に自分が立っていた訳では無かったようだが、そのラインをまたいだ事に違いはないし、微妙な立ち位置であった事にも違いはない。
状況の変化に気付くのが遅れるので、フードを被ったまま移動するのは危ない。瞬時に対応出来る様に、やはり両耳は出すべきである。
それともう1つ、おかんにこの報告はしない方が良さそうだという事だ。


雨脚は一向に衰える気配は無い。
急激な増水を気にしつつ、猿留山道橋周辺に釣り場を変えて暫く釣り上がる。いつもなら良ポイントが点在するこの辺りも、 流れに飲まれてしまって、とても釣れる気がしない。もうこうなってくると全てが無駄な抵抗である。ここ猿留での釣りはもう無理だと判断する。
猿留がダメとくれば、広尾周辺の野塚川と豊似川を探索するコースしか無い。釣行前の事前調査をした際に、 エアエッジのエリアマップに広尾と大樹が載っていたので、メールチェックするにも都合が良い。躊躇することなく移動開始。

はじめに
初日(8日)
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