[ホーム/"ヤマトイワナ"探釣記]



2000年7月10日 : 早川水系 B川 B−1支流



度重なる週末の休日出勤に、もう耐えられんとばかり、後の事も考えずに2日分の休暇届を提出したのが先週の水曜日。
「仕事が滞ろうが溜まろうが、おりゃもう知らん。たまには1日ゆっくり釣りがしたいんぢゃ!」

まさにフォッサマグナ地帯

7月10日(月)、久方ぶりの平日釣行に、やる気マンマンで本日に挑んだ訳であるが、現地に到着し、遡行開始早々に思わず発してしまった言葉がこれ。
「ドッヒャー、なんじゃ?この瀑流帯は...」
まるで亀裂の中を水が流れていると感じ取れる異様な光景に全身が固まってしまう。南アルプスに渓は沢山あるとは言えども、入渓から直ぐに流れを見上げる渓は初めてだ。
とても、ヤマトイワナの魚影は求めようもない姿である。
怖いと感じながらも、その場に突っ立っていてもしょうがないので、取りあえず行ける所まで行って見る事にする。すかさず大岩にへばりつき遡行を開始するものの、ウェダーの靴底
が滑って思うように先へ進めない。
こんな事になるなら、ロッククライミングでも習っておけば良かった...
脇の斜面を高巻いている最中、マムシに何度か遭遇した。岩に手を掛けた時に触れる程に接近していた訳では無いものの、やはり視界に入ると一瞬なりともビビる。そう言えば、私がまだ横浜に住んでいた頃、 友人と一緒に山へ入りマムシハントをしたなぁ。当時学生で懐がいつも寒かった私は、伊勢佐木町のヘビヤにそれを持ち込み、数千円で買い取って貰ったものだ。(^^;
マムシの厄介なところは、人間が近づいてもその場から逃げない事。リールで頭をこづいたら、しっぽを振るわせて攻撃態勢に入りやがった。この点、他のヘビと容易に見分けが付くので参考にして頂きたい。
大岩をよじ登っている最中にも何度かフライを投入して見たものの、ピチッピチッとアタックしてくるそれは稚魚ヤマメに違いなかった。なにぶん#12のフックにかなり大きめの ハックルを巻いているので、当然食いつける訳は無く、そいつらを釣り上げる事は出来なかったが、まぁ間違いないだろう。いやだいやだ...(とってもヤマメきらい)
でも、こんな稚魚が何故、こんなに険しい連瀑帯の間に生息しているのだろう?上から流れ落ちて来たのだろうか...上!?!?
かなりまとまった数が居る様だ。なんにしても、命がけで登ったその上流で、ヤマメの釣果を確認してしまう事だけは避けたい。

あぁクソッ、ハイブリッドか...
そんな理由で、途中から納竿しひたすら登り続けて、全身汗だくで呼吸も荒くなった1時間20分の後、ようやく難所をクリアーしたと見えて、流れの傾斜が緩やかになった為、 早速ロッドを振ってみる。ヤマメが掛かりません様に!
落ち込みにフライを投入し5〜6投目で、白泡のとぎれから小型のイワナがフライを追いかけてはまた白泡の中に消える行為を3度ばかり確認した。「よしよし魚は居た!居たぞ!」
まずはアイツが何モンかを確認しなければと、入念にジェルを染み込ませたフライに願いを込めて再び投入。その瞬間、淵のひらきまで一気に走って来てバックリと 食いついたヤツは、今までの小型とは別の、ふた周りほど大きなイワナだった。もう引きを楽しむ余裕など皆無で、予めアワセ切れの対策として結んでいた5Xのリーダー直結システムで、一気に そいつを引き抜いた。
「ヤマトじゃーんっ(^^)」
でもハイブリッドだけど...まぁ取りあえずそんな事はどうでもいい。ハイブリッドが確認出来れば、純血もどこかに居るハズだからと、再び遡行を開始する。
難所をクリアーしたと思ったのもつかの間、浸食・崩壊を繰り返す深い峡谷がまたまた目の前に...自分の立つ位置から、その距離約300m程だろうか。もう勘弁して!
この時点で、更に奥へ分け入る事は諦めていた。なんたって足がガクガク状態で、これ以上無理すると帰れなくなっちゃうと思ったから。
そんな訳で、残された300mの区間を丁寧且つ慎重に2時間ほどの時間を掛けて、とにかくゆっくりと釣り上がった。
その結果、この区間に於いて更に5尾のハイブリッドを釣り上げた。型は20〜24cmの小型ばかりで、終始大物と純血を期待していた私にとっては、ちょっとばかり寂しい結果と相成ったが、 それでも今回の釣行では、南アの渓で純血ヤマトイワナが生息する可能性を秘めた場所を、新しく1本見つけた事になる。
今日断念したあの滝以遠を、とにかく覗いてみたい気持ちが先立って、帰路につきながら次回何時こようかと考えていた事は言うまでもないが、いかんせん大岩に阻まれるので軽装備では無理だ。 何らかの対策を講じなくては。

以前、訪れたこの渓の隣に位置する渓ではハイブリッドすら確認出来なかったので、もしも私の釣りがパーフェクト(^^;だとしたら、ヤマトイワナの生息地に飛び地が有るとは、この事を指すのかも 知れない。